海は、優しく悲しい青色やね。

あのダイビング事故について思うこと。

はいさい!
予備校の講師、さすらいのペットボトル職人から交番のおまわりさん、機動隊員を経て現在にいたるダイビングガイド兼写真家のせ~じです。

ホントにヘンテコな私の経歴。
詳しいコトは、コチラに書いてます。→「ガイドする写真家・せ~じができるまで」

ダイビング業界に足を踏み入れて、かれこれ25年。
警察官を辞めた後は、PADIのIDCスタッフインストラクターとして、アシスタントインストラクターを育成したりもしてます。

あるダイビング事故の発生

私がブログを休んでいた3月21日。慶良間諸島近海で、体験ダイビングの死亡事故が起きてしまいました。

渡嘉敷島 観光客の女性ダイビング中に死亡
21日昼ごろ、渡嘉敷島でダイビングをしていた観光客の女性が海底に沈んでいるのが見つかり、病院に運ばれましたが死亡が確認されました。

那覇海上保安部などによりますと、21日正午ごろ、渡嘉敷島の北300メートルの沖合いでダイビングをしていた女性が、深さおよそ5メートルの海底に仰向けの状態で沈んでいるのをインストラクターが発見しました。
女性は心肺停止の状態で病院に運ばれましたが、およそ2時間後に死亡が確認されました。
死亡したのは兵庫県に住む48歳の女性で、家族と一緒に渡嘉敷島を訪れていたということです。
海上保安部が事故の原因を詳しく調べています。
ニュースソースはコチラ→RBCニュース

で、この事故が起きてしまったダイビングボートに乗り合わせていたお客様が、自らの目撃をFacebookに投稿されたんですね。

そして、この事故に関する情報が多くのダイバー仲間を通じて一気に拡散したため、ニュース報道よりも早く私の耳にも入ってきました。
春休みの家族旅行。

ご家族で体験ダイビングを楽しもうとしていたところ、突然見舞われたあまりにも悲しい事故。
ご主人や娘さんの心情を考えてしまうと、耐えられませんね。

でも、感情を抑えて、冷静にブログを書き進めていきますよ。

事故に関するコメントが発表される。

Facebook上で拡散し、多くのコメントが寄せられていく事故情報。

数日後には、当該ダイビングショップの代表が、事故に関するコメントを発表したという記事を目にしました。
記事はコチラ→ocean+α

急啓

2016年3月21日、弊社が開催する体験ダイビングツアーの事故につきまして、多くの皆様にご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。また、海上保安庁への調査協力や関係者方々への謝罪、被害者様の葬式への参列などでご報告が遅れましたことを深くお詫び申し上げます。
この度のことは、インストラクターによる管理責任とはいえ、弊社として社員への管理不行届を痛感しおてります。

本件に関して、本人および関係者の海上保安庁による事情聴取を述べている段階ではありますが、なしたことは弊社社会的責任は重大であり、許されることではなく、厳しい処分も覚悟している所存であります。

現在わかっていることは、ゲスト29名(ファン12名、体験ダイビング11名、スノーケリング5名、オープンウォーターコース1名)、スタッフ5名(船長含む)でのツアーで4~5mで起こった事故であること・事故後の対応がスノーケリング参加の消防隊によるCPRやファンダイビングでご参加の看護師の手により開始されたこと、渡嘉敷島への搬送およびドクターヘリで運ばれたこと、保安庁から被害者ご家族への船およびショップでの待機連絡などがあげられ、その他、詳しい内容は事実関係が海上保安庁の取り調べで明らかになるまでは、この件に関してのコメントはさし控えさせていただきます。

弊社が事故を起こしたことは事実であり、そのことで世間をお騒がせしてしまいましたこと、および皆様にご心配をおかけしましたことは、誠に申し訳なく存じます。

今後の活動予定は私代表の決心がつけられず、未定でございます。しかしながら、社員の生活および社員が今後のインストラクター活動をする上で、今回のような悲しい出来事を繰りさぬ為にも、営業活動、各ツアーのプロセス、安全対策の見直しの話し合を社員一丸となって努めてまいります。
また、今後の海上保安庁調査協力も事実だけを述べ、このダイビング業界の安全対策に貢献できればと思っております。さらに、ご家族様には真摯に向き合いご対応をさせて頂く所存でございます。

甚だ簡単ではありますが、関係者およびリピーター様、ご乗船頂いたお客様にもご迷惑とご心配をおかけしたことを心よりお詫びを申し上げます。

早々
2016年3月27日

この事故から見えてくること。

事故自体は、担当していたインストラクターに責任があるだろうし、もしかすると捜査の結果次第では、安全な人数比を無視させたショップサイドの経営体制などの管理者責任まで及ぶかもしれません。

事故の原因解明と責任追及について、捜査機関の発表があるまでは、無責任な発言は控えますね。

ただ、Facebookに投稿された事実並びに、上のコメントから、ひとつの大きな問題が浮き彫りになります。

それは、事故発生後。
海中でお母さんの意識がなくなってしまってからの対応について。

先のコメントにもありました。
意識をなくされたお母さんの心肺蘇生、応急処置を行ったのは、担当インストラクターでも、ショップスタッフでも、船長でもなく、「お客様」だった。

ご主人が、意識をなくされた奥さんの名前を呼びながら人工呼吸していたということも、聞きました。

では、5人もいたスタッフ。
彼らは何をしていたのでしょう。

現時点で、全ての真相を知るコトはできませんが、あのコメントと目撃談を見る限り、今回の事故で浮き彫りになった「事実」があるんです。

私が日頃から言い続けているあの言葉。
「安全管理」と「危機管理」の徹底

今回は特に「危機管理」意識の欠如が浮き彫りにされました。
危機管理意識が「不十分」なのではなく、「欠けている」のです。
ここまで、ついてこれてますでしょうか?

 

「安全管理」の徹底とは。

まずは「安全管理」について、サクッとお話しちゃいます。

いうまでもなく、私たちインストラクターはお客様が安全にダイビングを楽しめるように、あらゆるコトに神経を張り巡らせてます。

ガイドするチームの人数比や、お客様の組み合わせなどはもちろん。

船の乗り降り、機材のセッティング、エントリー、水中、エキジット、ボートの移動中、、、

あらゆるシチュエーションで、起こり得るトラブルを思いつく限り想定し、そのトラブルが起きないように手を打ち、口を出します。

ブログなので、ホントのさわりだけしか書かないけど、「安全管理」ってそういうコト。
コレを徹底して想定し尽くしていくコトが大事。
でもね、どれだけ想定し尽くしたつもりでも、「想定外」の事態も起こってしまうわけです。

それに、私たちも、「あっ!」なんていう小さなうっかりをしてしまうこともあるわけです。

そんな「小さなうっかり」や、「想定外の出来事」がタイミング悪く重なると、「事故」へと繋がります。

 

「危機管理」の徹底とは。

で、今回、浮き彫りになった「危機管理」意識の欠如。

サクッと言うなら、「事故」に出くわしてしまうと、テンパってしまう。何もできなくなる。何をしたらいいのかわからなくなる。

なので、日頃から安全管理意識だけじゃなく、危機管理意識を磨くことが大事っす。

まずは、あらゆるシチュエーションで起こり得るトラブルを想定してください。

次に、そのトラブルを起こさない防止策を考え抜いて、実行する癖をつけてください。

ここまでだと、まだまだ安全管理の段階。

さらに、万一そのトラブルが起きてしまった時にどう対処するか、というコトを考え抜いてください。

でも、あなたが考えついたその対処方法は、十中八九、ベストの対処方法ではありません。
その対処方法を取る時に起こり得るトラブルやミスをまた想定してください。

これの、繰り返しっす。

このイメージの繰り返しこそ、いざという時に人を助けるために必要なコトなんです。

お客様が海中で意識をなくしてしまっても、すぐに気づけるし、すぐに対処すれば、蘇生する確率が飛躍的に高くなる。

起きてしまった出来事、起きるかもしれない出来事に対して、「大きく構えて、小さくまとめる」コトが、危機管理の鉄則です。

 

私が伝えたかったこと。

今日のこのブログ。
いたずらに感情をあらわにし、起きてしまった事故を批判するために書いていません。
インストラクターさんの責任を追及するためでもありません。もちろん、擁護もしません。

そんな目的で発信したところで、その場は記事への同意やみなさんの体験談や、いろんな意見が出てくるだろうけど、そこから先へ進むことは、ほぼ無いから。

そもそも、「過失」が何たるかをしっかり説明できない方が感情にまかせて責任論に触れること自体、違和感を感じてます。

そんな発信、誰にもなんにも伝わらないし、響かない。
はい。何が言いたいかと言うと、

この記事は、私と同じ業界にいる、あなたに向けて書いてます。

まだ若手のスタッフさん。新米のインストラクターさん。若手を指導し始めた中堅インストラクターさん。その他関係者各位。
私は海難事故で祖父を亡くしてます。
元警察官、機動隊で水難救助隊もしていた私ならではの安全管理論、危機管理論っす。
私の書いてるコトを読んで、
「当たり前やん」と思う人ばかりであるコトを願います。

「いいコト書いてるやん」と思った人。
いいコトじゃなくて、私たちにとっては当たり前だと思ってもらえると嬉しいっす。

「勉強になった」と思った人。
まだまだ危険っす。この仕事、「楽しい」だけじゃダメよ。

安全管理と危機管理について、イマイチわかりにくいと感じたかたは、こっそり連絡ください。Facebookメッセージでも、お問い合わせフォームからでもいいです。
これ、すごく大事なことなので、もっとしっかりお伝えします。

事故をひとつでも未然に防ぐ。
そのために、今、私ができることをしておかねば、ね。

海を楽しむプロの私たちが、海で悲しい思いをさせちゃダメだよ。
キレイな青い海に、悲しい色を乗せないように、ね。
最後になりましたが、今回の事故で亡くなられた方の御冥福をお祈りします。

プロフィール

宮里 清司
宮里 清司
1977年・沖縄市生まれ。
中学生の頃から、父親の出身地である座間味島の海に潜り続けてきました。
大人になって座間味の海でガイドをするようになったのですが、父親との衝突や減圧症の軽症状に悩み、ダイビング業界を一時引退。
その後、何の縁か海の無い滋賀県に移り住み、ふとしたきっかけで警察官となり、機動隊で潜水士をしていました。
やっぱりダイビングからは離れられなかったです。
そして、座間味の海からも離れられなかったです。
警察官を辞めて、座間味の海に帰ってきました。
今は、子供の頃からずっと見続けてきた座間味の海でガイドダイバーとして、そして写真家として活動しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。